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福岡地方裁判所 昭和60年(ワ)1847号 判決

第一二一六号事件原告ら、第一二一六号事件原告・第四八〇号事件被告、第一八四七号事件原告ら(以下、いずれも「原告」という。)別紙原告目録記載のとおり

右訴訟代理人弁護士 牟田哲朗

同 大神周一

第一二一六号事件被告(以下「被告」という。) 株式会社オリエントファイナンス

右代表者代表取締役 阿部喜夫

右訴訟代理人弁護士 坂口孝治

同 山本紀夫

同 山本智子

第一二一六号・第一八四七号事件被告(以下「被告」という。)国内信販株式会社

右代表者代表取締役 塚本英志

右訴訟代理人弁護士 滝聰

第一二一六号事件被告(以下「被告」という。) 株式会社ライフ

右代表者代表取締役 松本辰雄

右訴訟代理人弁護士 松尾武美

第一二一六号・第一八四七号事件被告(以下「被告」という。)日本総合信用株式会社 (旧商号 西日本総合信用株式会社)

右代表者代表取締役 村上守

右訴訟代理人弁護士 中山茂宜

同 杉田邦彦

同 有岡利夫

第一二一六号事件被告(以下「被告」という。) モデルクレジット株式会社

右代表者代表取締役 松本善之

右訴訟代理人弁護士 木下隆一

第一二一六号事件被告・第四八〇号事件原告(以下「被告」という。) 株式会社セントラルファイナンス

右代表者代表取締役 廣澤金久

右訴訟代理人弁護士 谷本二郎

同 宮川英介

第一二一六号事件被告(以下「被告」という。) 日本信販株式会社

右代表者代表取締役 山田洋二

右訴訟代理人弁護士 伊達健太郎

第一二一六号事件被告(以下「被告」という。) 日立クレジット株式会社

右代表者代表取締役 小林信市

右訴訟代理人弁護士 原口酉男

同 村上博

同 林和正

主文

(第一二一六号・第一八四七号事件)

一1  別表(一)記載の原告らと被告株式会社オリエントファイナンスとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告らの同被告に対するその余の請求を棄却する。

二1  別表(二)記載の原告らと被告国内信販株式会社との間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告らの同被告に対するその余の請求を棄却する。

三1  別表(三)記載の原告らと被告株式会社ライフとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告らの同被告に対するその余の請求を棄却する。

四1  別表(四)記載の原告らと被告日本総合信用株式会社との間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告らの同被告に対するその余の請求を棄却する。

五1  別表(五)記載の原告らと被告モデルクレジット株式会社との間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告らの同被告に対するその余の請求を棄却する。

六1  別表(六)記載の原告と被告株式会社セントラルファイナンスとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告と同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告の同被告に対する費用償還債務及び報酬債務は、同表「残債務額」欄記載の額を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告の同被告に対するその余の請求を棄却する。

七1  原告三山清子と被告日本信販株式会社との間において、同原告と同被告との間の昭和五八年一〇月六日のコンピューター関連機器についてのリース契約(リース料合計九一万四四〇〇円)及びその解除に基づく同原告の同被告に対するリース料債務及び損害賠償債務は、金九万一四四〇円を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告の同被告に対するその余の請求を棄却する。

八1  原告山本順子と被告日立クレジット株式会社との間において、コンピューター関連機器の売買代金に係る同原告と訴外第一生命保険相互会社との間の金七九万二〇〇〇円の消費貸借についての同原告と同被告との間の昭和五八年八月二四日の保証委託契約に基づく同原告の同被告に対する事前求償債務は、金四二万〇三三六円を超えては存在しないことを確認する。

2  同原告の同被告に対するその余の請求を棄却する。

(第四八〇号事件)

九1 原告中野武三は、被告株式会社セントラルファイナンスに対し、金四九万七九〇四円及びこれに対する昭和六〇年六月七日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

2 同被告の同原告に対するその余の請求を棄却する。

(全事件)

一〇 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一二一六号・第一八四七号事件)

一  請求の趣旨(原告ら)

1 別表(一)記載の原告らと被告オリエントファイナンスとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

2 別表(二)記載の原告らと被告国内信販との間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの両被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

3 別表(三)記載の原告らと被告ライフとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

4 別表(四)記載の原告らと被告日本総合信用との間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

5 別表(五)記載の原告らと被告モデルクレジットとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告らと同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告らの同被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

6 別表(六)記載の原告と被告セントラルファイナンスとの間において、コンピューター関連機器の売買代金についての同原告と同被告との間の同表「契約年月日」・「立替金」欄記載の立替払契約に基づく同原告の同被告に対する同表「請求額」欄記載の額の費用償還債務及び報酬債務が存在しないことを確認する。

7 原告三山清子と被告日本信販との間において、同原告と同被告との間の昭和五八年一〇月六日のコンピューター関連機器についてのリース契約(リース料合計九一万四四〇〇円)及びその解除に基づく同原告の同被告に対する四五万七二〇〇円のリース料債務及び損害賠償債務が存在しないことを確認する。

8 原告山本順子と被告日立クレジットとの間において、コンピューター関連機器の売買代金に係る同原告と訴外第一生命保険相互会社との間の金七九万二〇〇〇円の消費貸借についての同原告と同被告との間の昭和五九年八月二四日の保証委託契約に基づく同原告の同被告に対する八一万円の事前求償債務が存在しないことを確認する。

9 訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁(被告ら)

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

(第四八〇号事件)

三 請求の趣旨(被告セントラルファイナンス)

1  原告中野武三は、被告セントラルファイナンスに対し、金八八万四四〇〇円及びこれに対する昭和六〇年六月七日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は同原告の負担とする。

3  仮執行宣言

四 請求の趣旨に対する答弁(原告中野武三)

被告セントラルファイナンスの請求を棄却する。

第二当事者の主張

(第一二一六号・第一八四七号事件)

一  請求原因(原告ら)

1 被告オリエントファイナンスは、別表(一)記載の原告ら(以下「(一)の原告ら」という。)に対し、被告国内信販は、別表(二)記載の原告ら(以下「(二)の原告ら」という。)に対し、被告ライフは、別表(三)記載の原告ら(以下「(三)の原告ら」という。)に対し、被告日本総合信用は、別表(四)記載の原告ら(以下「(四)の原告ら」という。)に対し、被告モデルクレジットは、別表(五)記載の原告ら(以下「(五)の原告ら」という。)に対し、被告セントラルファイナンスは、別表(六)記載の原告(以下「(六)の原告」という。)に対し、各別表記載のとおり、原告らが分離前の相被告九州朝日企画株式会社(以下「朝日企画」という。)又は同日本ビデコン株式会社(以下「日本ビデコン」という。)からコンピューター関連機器を買い受けるに際し、同表の「契約年月日」欄記載の年月日ころ、同表の「立替金」欄記載の売買代金の支払について、原告らとの間で、それぞれ同表の「手数料」欄記載の手数料を支払う約定の下に立替払契約を締結し、右各契約に基づき、右各売買代金を右売主に立替払したとして、同表の「請求額」欄記載の額の費用償還債権及び報酬債権を有すると主張している。

2 被告日本信販は、原告三山清子に対し、同原告が朝日企画からコンピューター関連機器を買い受けるについて、その方法として、昭和五八年一〇月六日ころ、同原告との間で、右物件について、期日を昭和五八年一〇月六日から昭和六一年九月六日までの三六か月間とし、リース料を一か月二万五四〇〇円(合計九一万四四〇〇円)とするファイナンスリース契約を締結したが、同原告が昭和六〇年五月分以降の右リース料の支払を怠ったので、昭和六一年六月一七日右契約を解除したとして、昭和六〇年五月一日から昭和六一年六月一七日までのリース料及び翌一八日から昭和六一年九月六日までのリース料相当の損害金合計四五万七二〇〇円の債権を有すると主張している。

3 被告日立クレジットは、原告山本順子に対し、同原告が朝日企画からコンピューター関連機器を買い受けるため訴外第一生命保険相互会社(以下「第一生命」という。)から手数料一八万二一六〇円の約定で七九万二〇〇〇円を借り受けるに際し、同原告の依頼により同原告との間で保証委託契約を締結し、右契約に基づき、第一生命に対し同原告の右消費貸借上の債務を保証したとして、八一万円の事前求償債権を有すると主張している。

よって、原告らは、右各債務の存在しないことの確認を求める。

二  請求原因に対する認否(被告ら)

認める。

三  抗弁

(被告オリエントファイナンス)

1(一)  被告オリエントファイナンスは、次のとおり商品を購入した(一)の原告らとの間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1) 契約日 同表「契約年月日」欄記載のとおり

(2) 契約の内容

(ア) 同被告は、同原告らに代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 同表「立替金」欄記載のとおり

商品購入先 朝日企画

(イ) 同原告らは、同被告に対し、同表「手数料」欄記載の各手数料を支払う。

(二) 右各契約に基づき、被告オリエントファイナンスは、商品購入先に対し、右各契約締結後間もなく、右各売買代金を支払った。

(被告国内信販)

2(一) 被告国内信販は、次のとおり商品を購入した(二)の原告らとの間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1)  契約日 同表「契約年月日」欄記載のとおり

(2)  契約の内容

(ア) 同被告は、同原告らに代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 同表「立替金」欄記載のとおり

商品購入先 朝日企画

(イ) 同原告らは、同被告に対し、同表「手数料」欄記載の各手数料を支払う。

(二) 右各契約に基づき、被告国内信販は、商品購入先に対し、右各契約締結後間もなく、右各売買代金を支払った。

(被告ライフ)

3(一) 被告ライフは、次のとおり商品を購入した(三)の原告らとの間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1)  契約日 同表「契約年月日」欄記載のとおり

(2)  契約の内容

(ア) 同被告は、同原告らに代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 金七九万二〇〇〇円

商品購入先 日本ビデコン

(イ) 同原告らは、同被告に対し、同表「手数料」欄記載の各手数料を支払う。

(二) 右各契約に基づき、被告ライフは、商品購入先に対し、右各契約締結後間もなく、右各売買代金を支払った。

(被告日本総合信用)

4(一) 被告日本総合信用は、次のとおり商品を購入した(四)の原告らとの間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1)  契約日 同表「契約年月日」欄記載のとおり

(2)  契約の内容

(ア) 同被告は、同原告らに代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 金七九万二〇〇〇円

商品購入先 日本ビデコン

(イ) 同原告らは、同被告に対し、各手数料一八万二一六〇円を支払う。

(二) 右各契約に基づき、被告日本総合信用は、商品購入先に対し、右各契約締結後間もなく、右各売買代金を支払った。

(モデルクレジット)

5(一) 被告モデルクレジットは、次のとおり商品を購入した(五)の原告らとの間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1)  契約日 同表「契約年月日」欄記載のとおり

(2)  契約の内容

(ア) 同被告は、同原告らに代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 金七九万二〇〇〇円

商品購入先 日本ビデコン

(イ) 同原告らは、同被告に対し、各手数料一一万三七六〇円を支払う。

(二) 右各契約に基づき、被告モデルクレジットは、商品購入先に対し、右各契約締結後間もなく、右各売買代金を支払った。

(被告セントラルファイナンス)

6(一) 被告セントラルファイナンスは、次のとおり商品を購入した(六)の原告との間で、その商品代金の立替払契約を締結した。

(1)  契約日 昭和五九年一二月七日

(2)  契約の内容

(ア) 同被告は、同原告に代わって次の商品代金を商品購入先に支払う。

商品名 コンピューター関連機器

代金 金七九万二〇〇〇円

商品購入先 日本ビデコン

(イ) 同原告は、同被告に対し、手数料一七万四二四〇円を支払う。

(二) 右契約に基づき、被告セントラルファイナンスは、商品購入先に対し、右契約締結後間もなく、右売買代金を支払った。

(被告日本信販)

7(一) 被告日本信販は、原告三山清子が朝日企画所有の代金七四万八〇〇〇円のコンピューター関連機器を買い受けるについて、その資金調達の方法として、昭和五八年一〇月六日、同原告との間で、右物件について次のようなファイナンスリース契約を締結した。

期間 昭和五八年一〇月六日から昭和六一年九月六日までの三六か月間

リース料 一か月二万五四〇〇円(期間中リース料合計九一万四四〇〇円)

支払方法 昭和五八年一一月から昭和六一年一〇月まで毎月二七日限り同被告福岡支店へ持参又は送金して支払う。

期限利益喪失 同原告がリース料の支払を一回でも遅滞したときは、同被告は、通知催告を経ることなくして本契約を解除することができ、この場合、同原告は、残リース料相当額を損害金として直ちに支払う。

(二) 同被告は、同原告が昭和六〇年五月分以降のリース料を支払わないので、昭和六一年六月一七日、同原告に対し、右リース契約を解除する旨の意思表示をした。

(被告日立クレジット)

8(一) 原告山本順子は、朝日企画からコンピューター関連機器を代金七九万二〇〇〇円で買い受けるについて、その資金として、昭和五九年八月二四日、第一生命から、次の約定で七九万二〇〇〇円を借り受けた。

手数料 金一八万二一六〇円

弁済方法 以上の合計九七万四一六〇円を昭和五九年一〇月から昭和六二年九月まで毎月七日限り二万七〇〇〇円あて分割して弁済する(ただし、初回は二万九一六〇円)。

期限の利益喪失 同原告が右割賦金の支払を一回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失い、直ちに残債務全額の支払義務が生じる。

(二)(1) 被告日立クレジットは、右(一)の消費貸借に際し、同原告から保証の委託を受け、昭和五九年八月二四日、同原告との間で、保証委託契約を締結した。

(2) 同被告は、同日、第一生命に対し、右(一)の同原告の第一生命に対する債務を保証した。

(三) 同原告は、昭和六〇年四月以降の右割賦金の支払を怠っている。

四 抗弁に対する認否(原告ら)

1 抗弁1ないし6の各(一)(立替払契約の締結)の事実はいずれも否認する。各(二)(立替払)の事実はいずれも認める。

2 同7の(一)(リース契約の締結)の事実は否認する。(二)(解除)の事実は認める。

3 同8の(一)(消費貸借契約の締結)及び(二)の(1)(保証委託)の事実は否認する。(2)(保証)の事実は認める。(三)(履行遅滞)の事実は認める。

五 再抗弁(原告ら)

1 契約締結の経緯

(一) 朝日企画及び日本ビデコン(以下、両者を一括して「日本ビデコンら」という。)は、昭和五八年九月ころ後記内容の「サブインカムシステム」を発案し、原告らに対し、「一円の現金も出さずに、御自分の信用を供与されるだけで、一口月一万円の副収入が得られます。」「クレジットの支払と副収入は、売上高にかかわらず保証いたします。」として、テレビゲーム機(原告らと日本ビデコンらとの間の契約、原告らと被告らとの間の契約等において、前記のとおりコンピューター関連機器と表示されているもの。以下「ゲーム機」という。)の購入及び右システムへの加入を勧誘した。

(二) その際の説明によると、「とにかく名義を貸してもらい、信販会社の確認の電話に対し、「ハイ、ハイ」と答えてもらえば、それだけでいいのです。」「それだけで、一口一万円の副収入が得られます。」ということであった。

しかも、被告らとの手続は、日本ビデコンらがすべて代行し、原告らがこれに関与することはなかった。被告らに対する割賦金の支払のための銀行口座についても、原告らが特に申し出ない限り、日本ビデコンらが開設し、かつ、その通帳及び印鑑を保管し、原告らには、副収入払戻しのためのキャッシュカードが送られてくるだけであった。

そして、原告らは、日本ビデコンらの指示に従い、被告らの確認の電話に対し、「ハイ、ハイ」と答えた。

2 「サブインカムシステム」の内容

(一) 日本ビデコンらの作成したパンフレット等による「サブインカムシステム」の内容は、次のようなものであった。

(1) 基本的なものは、まず、朝日企画が契約者にゲーム機を販売する。売買代金の支払については、契約者が信販会社と立替払契約を結び、朝日企画が代金の立替払を受ける。売買の目的物たるゲーム機は、契約者が引渡しを受けるのではなく、売買契約と同時に、朝日企画と実体を同じくする同一会社である日本ビデコンが契約者から預かり、これを設置、運用して収益を上げる。そして、その収益をもって信販会社に対する割賦金及び契約者に対する副収入金の支払に充てる、というものであった。

なお、当初昭和五八年一〇月ころは、右のとおり、販売会社が朝日企画で、運用委託会社が日本ビデコンであったが、後には、日本ビデコンも販売会社になっていた。

また、同システムへの加入の単位は、口数によるものであるところ、当初、契約者は、一台当たり代金一九万八〇〇〇円のゲーム機を一口当たり四台(代金合計七九万二〇〇〇円)購入することになっていたが、そのうち、一台当たりの代金が三九万六〇〇〇円になり、一口当たり二台(代金合計七九万二〇〇〇円)購入することになっていた。

(2) 右システムを一口二台の例で説明すると、次のようになる。

契約者は、一台三九万六〇〇〇円のゲーム機二台を代金合計七九万二〇〇〇円で購入し、同システムに加入する。そして、右代金の支払について信販会社と立替払契約を締結し、立替金と手数料との合計額を、毎月二万七〇〇〇円(ただし、初回は二万九一六〇円)ずつ、三六回に分割して支払うこととする。

他方、日本ビデコンは、契約者から預ったテレビゲーム機を設置、運用して、仮に一台当たりの売上げが月四万円とすれば、設置先へ売上げの三〇パーセントを設置料(ロケーションマネー)として支払い、差引き二万八〇〇〇円の売上げの中から一万八五〇〇円を運用収益として契約者に支払う(その残額九五〇〇円は、日本ビデコンが収得することになると思われるが、いかなる理由に基づいて収得するのかは明らかでない。)。したがって、契約者は、二台で合計三万七〇〇〇円の運用収益金を得ることができ、信販会社への賦払金二万七〇〇〇円を差し引いた残額一万円を副収入として得ることができる。

契約者と日本ビデコンとの間の右運用委託契約は、三年で終了し、その際、朝日企画が契約者からゲーム機を売渡価格七九万二〇〇〇円(二台分)の三パーセントに相当する二万三七六〇円で買い取る。

したがって、契約者は、三年間で、一口であれば三八万三七六〇円(三六万円+二万三七六〇円)、一〇口であれば三八三万七六〇〇円もの副収入を何らの支出もなく得ることができる、というものであった。

(二) ところが、「サブインカムシステム」の実体は、右の表向きの内容とは異なり、次のようなものであった。

(1) 同システムへの加入者は、一口当たりゲーム機を二台(当初は四台)購入することになっていたが、日本ビデコンらは、契約台数に見合うゲーム機を保有しておらず、契約者に引き渡すべきゲーム機がないのに、これがあるように装って「空売り」を続けていた。すなわち、日本ビデコンらが保有していたゲーム機は、全部で約三二〇台であったにもかかわらず、販売台数は五五八台(二七九口)であった。しかも、右三二〇台にしても故障があいつぎ、昭和六〇年一月末現在において実際に稼働していたゲーム機は、一〇〇台にも満たなかった。

(2) また、契約者は、ゲーム機を購入し、その所有権を取得した上で、日本ビデコンへ運用委託をするはずのものであり、その点について、販売用パンフレットは、「確実有利な『担保』つき」と題して、「このシステムの特長の一つは、確実でユニークな担保が付いていることです。ご契約者には一口二台の該当マシンを特定し、設置契約(設置先と当社の)と営業権(当社が集めたお客ごと)を、運用委託を受けたマシンに付けて、そっくり担保として差入れます。万一の際、マシンを押さえて営業を続ければ損どころか、多少手間はかかりますが、むしろお得になるはずです。」としていた。

ところが、契約者は、ゲーム機の現物を見せてもらったことはなく、設置場所も知らせてもらうことはなかった。

(3) さらに、販売用パンフレットには、「現在この種のマシンの売上は月間四万円前後が平均です。……しかし、平均とは少くとも一〇〇台以上ではじめて言えることで一台一台の収益格差は激しいものです。少いのは月四・五千円。多いのは八・九万円もあります。専門の業者が、いろいろと対策を施し平均を上げて、はじめて確定した運用収益の支払を保証できるのです」とあり、「サブインカムシステム」は、各ゲーム機の売上げを一旦日本ビデコンに集めてプールした上で、各契約者に一口当たり三万七〇〇〇円の運用収益金を配当しようというものである。

これを要するに、「サブインカムシステム」においては、契約者と各ゲーム機との直接的な結び付きはなく、ゲーム機の販売購入の実体が欠落していた。

(4) しかも、各ゲーム機の運用の実態をみると、ゲーム機一台当たりの売上げは月一万円程度しかなく、「サブインカムシステム」を運営していくことは到底不可能であった。すなわち、信販会社への賦払金と契約者への運用収益金の合計金額は、一口二台当たり三万七〇〇〇円であり、また、ゲーム機の設置先に設置料として売上げの三〇パーセントを支払う必要があるから、ゲーム機一台の売上げは、人件費等を除いても、少なくとも月二万六四二八円なければならなかったことになる(三万七〇〇〇円×1/2×10/7≒二万六四二八円)。

3 債務不存在の確認を求める理由

(一) 原告らと被告らとの間の契約(以下「第二契約」という。)は、原告らと日本ビデコンらとの間のゲーム機販売契約及び「サブインカムシステム」加入契約(以下「第一契約」という。)と一体となっているところ、

(1) 第一契約は、前記のとおり不可能なことを契約の内容としており、また、その内容が明らかに公序良俗に反するものであって、無効である。

したがって、第二契約も無効である。

(2) 日本ビデコンらは、「サブインカムシステム」があたかも実現可能なごとく詐言をろうして原告らを誤信させ、よって、第二契約を締結させたものである。

そこで、原告らは、分離前の相被告である日本ビデコンら及び被告らに対し、本訴状をもって第一契約及び第二契約における原告らの意思表示を取り消す旨の意思表示をした。

(3) 第一契約は、ゲーム機(二台)の売買等を目的とするものであるが、これに対し、第二契約における商品名は「コンピューター関連機器TBG一〇一・一式」となっており、明らかにその目的商品が異なる。

第二契約の目的商品であるコンピューター関連機器について原告らと日本ビデコンらとの間では売買契約は締結されておらず、したがって、本件第二契約は、立替払委託の原因たる売買契約の実体を欠くものであって、成立していないものである。

(4) 第一契約の実体は、前記のとおりゲーム機の販売購入というよりも、信販会社からの立替金の受領を目的として原告らを「サブインカムシステム」へ加入させ、もって、原告らの信用を悪用することにあった。そのため、日本ビデコンらは、大量の「空売り」を行ったのであり、原告らが売買の目的物たるゲーム機の所有権を取得し、その引渡を受けることは、当初からあり得ないことであった。

したがって、右(三)と同じく、第二契約は、立替払委託の原因たる売買契約の実体を欠いているものであって、不成立もしくは無効である。

仮に、第一契約がゲーム機の売買としてその成立が認められるとしても、以上の事実に照らせば、原告らは、ゲーム機の引渡しを受けていないのであるから、被告らの請求に応ずる義務はない。

(二) さらに、第一契約が有効に成立したとしても、

(1) 第一契約は、少なくとも原告らの賦払金及び原告らへの副収入に関して、ゲーム機の売上げを保証したものである。

しかしながら、ゲーム機の売上実績は、明らかに右保証に反するものであり、また、日本ビデコンらは、第一契約の対価たる副収入(一口当たり月一万円)の支払を昭和六〇年一月末以降していない。

そこで、原告らは、本訴状をもって、分離前の相被告たる日本ビデコンらに対し、第一契約を解除する旨の意思表示をした。よって、原告らは、被告らの請求に応ずる義務はない。

(2) また、第一契約の締結勧誘のためのパンフレットには、「リスク負担が限度とお考えの方は、途中で増枠を止められてもかまいません。また、既に契約済みのクレジット支払期間中の解約もできます。この場合は、取扱信販会社の所定の解約手数料を、お支払い頂くことになりますので、すでにお受け取りになった収益金の一部を、返して頂く場合があります。」と明記されていた。すなわち、第一契約については、原告らに解約権が留保されているものである。

それゆえ、原告らは、本訴状をもって、前記日本ビデコンらに対し、右解約権に基づき、第一契約を解除する旨の意思表示をした。よって、原告らは、被告らの請求に応ずる義務はない。

(三)(1) 日本ビデコンらは、「サブインカムシステム」への加入を勧誘するについて、原告らに対し、「大手信販会社の支援がある。」旨盛んに述べており、原告らも、被告らの名前を聞いて安心して勧誘に応じたのである。

(2) 被告らの担当従業員は、「サブインカムシステム」の前記実体、すなわち、契約者がゲーム機の所有権を取得するものではなく、もちろんゲーム機の現実の引渡しなどなく、販売購入の実体がないこと等を十分承知しており、そこで、立替払等の契約書には、「ゲーム機の売買」と記載させず、実体とは異る「コンピューター関連機器TBG一〇一の売買」である旨あえて記載させて、自社の決済を取り付けていたものである。

(3) 被告らは、日本ビデコンらの右「サブインカムシステム」の実体を何ら積極的に調査することなく、日本ビデコンらが、あたかも大手信販会社と一体のシステムであるかのごとくしてする勧誘を容認し、安易に高額かつ大量の立替金を日本ビデコンらに交付したものである。

(4)(ア) 被告らは、日本ビデコンらと加盟店契約を締結する際、販売の目的物を現認し、その販売の実態及び日本ビデコンらの信用を調査したはずであるし、また、その義務がある。一回的な取引関係にしかない原告ら消費者に対し、被告らは、販売店と事前に加盟店契約を締結し、継続的な資金供給関係にあるのであるから、当然に右調査義務が課せられてしかるべきである。

それゆえ、被告らが「サブインカムシステム」の実体を確認した上あえて加盟店契約を締結したとすればもちろん、調査・確認をしないまま実体を知らずに右契約を締結したとしても、信販会社としては、当然尽くすべき注意義務を怠ったことは明らかである。

(イ) 本件各債務の弁済として、被告日本信販は、四五万七二〇〇円を、被告日立クレジットは、一六万四一六〇円を、その余の被告らは、別表(一)ないし(六)の各「支払額」欄記載の各金額を受け取った。

六 再抗弁に対する認否(被告ら)

1 再抗弁1(契約締結の経緯)、2(「サブインカムシステム」の内容)の各事実は知らない。

2 同3(債務不存在の確認を求める理由)はすべて争う。ただし、(三)の(4)の(イ)(支払)の事実は認める。

(第四八〇号事件)

一  請求原因(被告セントラルファイナンス)

1 第一二一六号・第一八四七号事件の抗弁6の(一)、(二)記載のとおり。

2 右立替払契約において、原告中野武三は、被告セントラルファイナンスに対し、次のことを約した。

(一) 同原告は、同被告に対し、立替金七九万二〇〇〇円と手数料一七万四二四〇円の合計九六万六二四〇円を昭和六〇年一月六日から昭和六二年一二月まで毎月六日限り二万六八〇〇円あて(ただし、初回は二万八二四〇円)分割して支払う。

(二) 同原告が右分割金の支払を怠り、同被告から二〇日以上の期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず、その期間内にこれを履行しなかったときは、右期限の利益を失う。

(三) 遅延損害金の利率は年六パーセントとする。

3 同被告は、同原告が右分割金のうち昭和六〇年四月分以降の支払をしないので、同原告に対し、昭和六〇年五月一七日に同原告に到達した書面で、右書面到達の日から二〇日以内に延滞分割金を支払うよう催告した。

よって、同被告は、同原告に対し、立替払契約に基づく金八八万四四〇〇円及びこれに対する昭和六〇年六月七日から支払済みまで約定の年六パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否(原告中野武三)

1 請求原因1(立替払契約の締結及び立替払)の事実に対する認否は、第一二一六号・第一八四七号事件の抗弁事実に対する認否のとおり。

2 同2(約定)の事実は否認する。

3 同3(催告)の事実は認める。

三  抗弁(原告中野武三)

第一二一六号・第一八四七号事件の再抗弁事実のとおり。

四 抗弁に対する認否(被告セントラルファイナンス)

右事件の再抗弁事実に対する認否のとおり。

第三証拠《省略》

理由

一  第一二一六号・第一八四七号事件について

1  請求原因について判断する。

請求原因1の事実のうち、被告オリエントファイナンスに関する部分は、(一)の原告らと同被告との間で争いがなく、被告国内信販に関する部分は、(二)の原告らと同被告との間で争いがなく、被告ライフに関する部分は、(三)の原告らと同被告との間で争いがなく、被告日本総合信用に関する部分は、(四)の原告らと同被告との間で争いがなく、被告モデルクレジットに関する部分は、(五)の原告らと同被告との間で争いがなく、被告セントラルファイナンスに関する部分は、(六)の原告と同被告との間で争いがない。

同2の事実は、原告三山清子と被告日本信販との間で争いがなく、同3の事実は、原告山本順子と被告日立クレジットとの間で争いがない。

2  抗弁について判断する。

(一)  《証拠省略》によると、抗弁1の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(一)の原告らと被告オリエントファイナンスとの間で争いがない。

(二)  《証拠省略》によると、抗弁2の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(二)の原告らと被告国内信販との間で争いがない。

(三)  《証拠省略》によると、抗弁3の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(三)の原告らと被告ライフとの間で争いがない。

(四)  《証拠省略》によると、抗弁4の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(四)の原告らと被告日本総合信用との間で争いがない。

(五)  《証拠省略》によると、抗弁5の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(五)の原告らと被告モデルクレジットとの間で争いがない。

(六)  《証拠省略》によると、抗弁6の(一)(立替払契約の締結)の事実が認められ、同(二)(立替払)の事実は、(六)の原告と被告セントラルファイナンスとの間で争いがない。

(七)  《証拠省略》によると、抗弁7の(一)(リース契約の締結)の事実が認められ、同(二)(解除)の事実は、原告三山清子と被告日本信販との間で争いがない。

(八)  《証拠省略》によると、抗弁8の(一)(消費貸借契約の締結)及び(二)の(1)(保証委託)の事実が認められ、同(2)(保証)及び(三)(履行遅滞)の事実は、原告山本順子と被告日立クレジットとの間で争いがない。

3  再抗弁について判断する。

(一)  《証拠省略》によると、再抗弁1(契約締結の経緯)の(一)、(二)及び2(「サブインカムシステム」の内容)の(一)の(1)、(2)、(二)の(1)ないし(4)の事実のほか、日本ビデコンらの物的施設は、事務所だけで店舗はなく、従業員数は、両方で二十数名であったこと、日本ビデコンらの営業は、昭和五九年九月ころまでは一応順調であったが、その後行き詰まり、昭和六〇年二月ころ被告らに対する割賦金の支払を停止したことが認められる。

(二)  ところで、右事実を前提とする原告らの再抗弁の主張は、原告らと日本ビデコンらとの間の契約の不成立、無効、取消、解除又は右契約に基づくゲーム機の引渡しがないことをもって被告らに対抗しようとするもの(再抗弁3の(一)、(二))と、被告らに固有の事由によるもの(同(三))とに大別することができる。

(1) そこでまず、前者の主張について検討する。

(ア) 立替払契約に係る販売店と信販会社との関係は、販売店が信販会社の信用供与を利用して顧客を獲得し、信販会社が販売店の獲得した顧客に信用を供与することによって報酬利益を得るという相互依存の関係にある。しかも、信販会社は、顧客との間の立替払契約についての事務手続をすべて販売店に委託するのが通例であり、したがって、右契約締結の過程で顧客が信販会社と直接接触をもつ機会がないため、顧客の意思としては、信販会社に例えば売買代金の立替払を委任したという意識に乏しく、販売店との間の売買契約の中で代金の支払方法を分割払としたように認識する例が少くないといわれている。

したがって、一般論として、立替払契約に係る取引について顧客が販売店に対して生じた事由をもって信販会社に対抗することができるか否かを判断するに当たり、販売店と信販会社とが法律的に別個独立の存在であるという一面に捕らわれずに、両者が経済的に密接不可分の関係にある実情を考慮すべきであるという議論は、対抗すべき事由によっては合理性のある議論というべきである。

(イ) しかしながら、前記「サブインカムシステム」の実体に即していえば、原告らは、正常な取引に基づいて信販会社とかかわりをもったものではなく、自らは何らの出捐もせず、かつ、一切の労務の提供もしないで月一万円以上の副収入を得ようともくろみ、そのためには、信販会社に虚言をろうすることも辞さなかったものであって、換言すれば、原告らと日本ビデコンらとの間の法律関係の実質は、有償の名義貸与であり、原告らとしては、右副収入金が自己の銀行口座に振り込まれ続ける限り、日本ビデコンらに対し、「サブインカムシステム」の法形式上の権利義務を主張する意思は全くなかったものである。

しかるに、日本ビデコンらが倒産し「サブインカム」の支払が跡絶えた途端に、原告らにおいて、もともと意識になかった右法形式上の事由を盾に信販会社に対する義務の履行を拒絶するのは、信義則の理念に照らし、明らかに不合理である。原告らは、日本ビデコンらとの内部関係において右事由を主張することはできても、これをもって信販会社に対抗することはできないというべきであり、信販会社に対しては、自らの意思によって名義を貸与した者として、その実質に即した責任を負わなければならない筋合いである。

よって、原告らの前者の主張は、割賦販売法三〇条の四の適用の有無の点を含めその余を判断するまでもなく、失当である。

なお、原告らの再抗弁3(一)(3)の主張は、商品名の表示方法の異同をもって、商品そのものの異同を論ずるものであり、理由がないことが明白である。

(2) 次に、後者の主張について検討する。

(ア) 被告らが「サブインカムシステム」の実体を知っていたことは、本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。

(イ)(ⅰ) 問題は、再抗弁3(三)の(3)、(4)の主張であるが、販売店が、信販会社の信用供与を悪用し、立替金を詐取したり、営業資金を得るための手段に利用したり、不正、不当な方法で商品を販売したりするについて、多数の顧客を巻き添えにする例があることは、当裁判所に顕著である。本件の「サブインカムシステム」なるものも、自己資本も信用もない企業が短期間に大量のゲーム機を確保、運用しようと図ったものであって、信販会社による簡易な信用供与の制度がなければ、本来成り立ち難い企画である。それだけに、信販会社としては、販売店との間で加盟店契約を締結し前記のとおりいわば業務を提携するに当たっては、自己の信用供与が販売店によって不当に利用されることを未然に防止するため、販売店の信用調査を十分に行う義務があるというべきである。そして、右義務は、信販会社が前記のとおり販売店を契約事務の代行機関として利用している実情等に鑑み、重要なものと認識しなければならないであろう。

この点について、《証拠省略》によると、通商産業省産業政策局は、昭和五八年三月一一日、社団法人全国信販協会に対し、文書で、不良販売業者を加盟店にしないための具体的措置として、①販売業者が取扱う商品及び役務の内容並びに販売方法等を十分把握し、②必要に応じ販売業者について興信所等の専門機関に調査を依頼するか、又は自社でこれと同等程度の調査を行うよう指導、要請したことが認められる。

(ⅱ) そこで、これを本件についてみるに、日本ビデコンらが信販会社による信用供与の悪用を企む不良販売店であったことは、既に明白であり、したがって、被告らが日本ビデコンらと加盟店契約を締結するに当たり、右事実を看過したことは、特段の事情がない限り、右調査義務の不履行によるものと推認すべきところ、被告オリエントファイナンスの場合、《証拠省略》によると、同被告は、昭和五八年一〇月三日朝日企画と加盟店契約を締結するに当たり、朝日企画の申込みに応じて担当者が同事務所に出向き、代表者である糸屋博司と面談して、主要取扱い商品がOA機器及びコンピューターであることなど所定の加入申込書に基づく通り一遍の事情聴取をしたほか、朝日企画と右糸屋がかつて信用取引上のトラブルを起したことがないかどうかを調査したにとどまり、朝日企画が山口相互銀行の紹介であるということもあって、前記のようなそれ以上の厳格な審査はしなかったことが認められる。

そして、他の被告らの場合も、《証拠省略》によると、右審査の程度は、被告オリエントファイナンスの場合と大同小異であったことが認められる。

よって、被告らは、日本ビデコンらと加盟店契約を締結するに当たり、右調査義務違反の過失があったものというべきであるところ、被告らが右調査義務を尽くすことによって「サブインカムシステム」なる企画を察知し、右加盟店契約の締結を見送っていれば、右企画は不成立に終り、原告らが右システムの誘引を受けることもなかったことは、推測に難くない。

(ⅲ) そこで、公平の理念にのっとり、民法四一八条の規定を類推適用して、原告らの被告らに対する本件債務の額を定めるについて被告らの右過失を斟酌すべきものと解するのが相当であるところ、原告らの前記過失と被告らの右過失との割合は、諸般の事情に鑑み、六対四と認めるのが相当である。

(ⅳ) 再抗弁3(三)(4)の(イ)(支払)の事実は、それぞれの当事者間において争いがない。

以上のとおりであって、再抗弁3(三)の(3)、(4)の主張は、右の限度で理由があり、これを超える部分は失当である。

二  第四八〇号事件について

1  請求原因1(立替払契約の締結及び立替払)の事実についての判断は、前記のとおりであり、《証拠省略》によると、同2(約定)の事実が認められ、同3(催告)の事実は、原告中野武三と被告セントラルファイナンスとの間で争いがない。

2  抗弁についての判断は、前記のとおりである。

三  結論

以上の理由により、第一二一六号・第一八四七号事件については、(一)ないし(六)の原告らの被告オリエントファイナンス、同国内信販、同ライフ、同日本総合信用、同モデルクレジット、同セントラルファイナンスに対する本訴請求は、同被告らとの間の各立替払契約に基づく費用償還債務及び報酬債務が別表(一)ないし(六)の各「残債務額」欄記載の額(立替金と手数料の合計額の六割から支払額を控除した額)を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由があり、原告三山清子の被告日本信販に対する本訴請求は、同被告との間のファイナンスリース契約に基づくリース料債務及び同契約の解除に基づく損害賠償債務が九万一四四〇円(計算式は、前同旨である。)を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由があるから、これを認容し、原告山本順子の被告日立クレジットに対する本訴請求は、同被告との間の保証委託契約に基づく事前求償債務が四二万〇三三六円(計算式は、前同旨である。)を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由があるから、これを認容し、原告らのその余の請求部分は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、第四八〇号事件については、被告セントラルファイナンスの原告中野武三に対する反訴請求は、立替払契約に基づき、金四九万七九〇四円及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である昭和六〇年六月七日から支払済みまで所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求部分は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

なお、被告セントラルファイナンスの仮執行宣言の申立は、相当でないものと認め、これを却下する。

(裁判官 小長光馨一)

〈以下省略〉

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